2011年 07月 15日
ひとりでアウトドア満喫な青年が岩の隙間で人しれず腕を挟まれてしまった5日間。
これは結末を知らない方が面白いと思って、映画館で見た予告編以外の情報を一切仕入れずに行きました。 大正解。 そんな訳で以下ネタバレ。 見たい人はネタバレ見ないで行った方がいいですよ。まぁバレるほどのネタじゃないけど、アタシは前情報ない方が断然楽しめた。 いやさ、そうじゃないかなとは思ってたんですよ。実際のエピソードを元にした映画って触れ込みだけでもう結末は出てる様なもんですし。決断つったらもうそれしかないし。でも一縷の希望とか奇跡も捨てきれない訳です。映画だし、ノンフィクションネタだけど、事実は小説より奇なりとかいうしさ。いや甘かったんですが。 でもそういう「一縷の希望を求めちゃう気持ち」が主人公の状況と見事に同調しちゃうんですよね。 狭い岩の隙間で、ほとんど動きのないシーンの中、演技力も演出も素晴らしく引き込まれて行きました。アタシ映画見てるとあっさり感情移入できちゃうタイプなので、わかってるのにもう痛いわ苦しいわ焦るわ。たまりませんよほんと。 シーンのほとんどは主人公の青年の一人芝居です。だって腕挟まれて動けませんのです。ビデオで自分撮りしたり、狭い峡谷にわずかに陽が射し込む瞬間に魅せられたり、隙間から見上げる青空を横切るワタリガラスを見たり、安い中国製万能ツールのオマケナイフで岩を削ったりしながら、ひたすらジタバタするしかない5日間を過ごします。 ねちっこい幻覚シーンがいいです。スティーヴン・キングの小説みたい。助かるの助かっちゃうの!?と思いきやいや、いややっぱ幻覚だよねそんな都合よく27キロの道を移動できないよね云々。でもその幻覚がものすごくリアルです。元彼女との思い出や後悔や、母親からの電話に出なかった事へのうしろめたさや。 ひとりだからこそひたすらに自由な週末のアウトドアと、自由と引き換えに孤独である事をまざまざと描き出す。 まぁしかし、だだっ広い国立公園の岩の隙間を偶然覗き込む人なんかいるはずもなく、奇跡はおこらず、意識も朦朧とした5日目、自分で腕をへし折って、刃がほとんどなくなった小さなナイフで腕を切り落として脱出する訳です。 その腕切断シーンの痛いこと痛いこと。「あああああ痛い痛い痛い!!」って呻きながら見てました。うるさくしてごめんなさい隣の人。 この映画の演出のイイところは、感動とか諦めないとか不屈の精神とか、そういう感動を煽る描き方をしていないところだと思うのです。ありがちな、「あきらめないぞ。絶対に生きて帰るんだ」みたいな描き方はしていない。 狭い岩の隙間で描かれるのは主人公の自嘲なんですよね。「やっちまった」って感じ。 道に迷ってる女の子二人組に「岩は常に動いてる。今じゃないのを願うだけさ」なんて解った事言っちゃってる直後に自分が挟まれてこのザマな訳です。 実際には行方不明の彼の為に捜索隊も出されていたんだそうです。 最後のシーンでかけつけるヘリコプターも、元々彼の捜索の為のもの。だけど、それは一切語られません。挟まれている彼には知り得ない情報だから、だからなおさら観ている方も一緒になって苦しいんですよね。 心理描写をくっきりと描き出している。派手なシーンも特撮もない、こういう映画も好きなんですアタシ。 それにしてもスプラッターホラーやアクションやゾンビ映画の、首や腕や足が吹っ飛んだりちぎれたりぶった切られたりするシーンはゲラゲラ笑って楽しめるアタシなのに、今回のは痛かったわぁ。メル・ギブソンの「パッション」以来の痛さだったかもしんない。 >127時間[公式]
by suzu_na
| 2011-07-15 14:34
| Movie
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